saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第四章「自由への恐れ」(14)


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(14)

 

 ある物語を 話そう。

叙事詩マハーバーラタ」の中で、ビィシュマの父が、ある一人の少女と 恋に落ちた。

彼は とても年老いていた。

が、たとえ年老いていても、恋をするのは 自然なことだ。

たとえ死の床にあっても、恋に落ちることは できる。

その少女は 結婚するつもりだった。

でも、その少女の父親が 一つの条件を 出してきた。

 

少女の父は こう言った。

「あなたには、ビィシュマという息子がいる」

ビィシュマは まだ若かった。

少女の父は「ビィシュマは あなたの王国を あなたから引き継ぐでしょう。 そこで、私の娘とあなたの間に 男の子ができたら、ビィシュマではなく、その男の子が あなたの王国を 引き継ぐことにしていただきたい」と 言った。

 

ビィシュマの 父にとって、ビィシュマに それを告げるのは とても不自然なことだった。

 

彼は年老いていた。

いつ死ぬかもしれなかった。

だから 彼は心配し、悲嘆に暮れた。

 

そこでビィシュマが言った。

「どうしたのですか ?

何か気にかかることでも おありですか ?

私に 何かできることがありましたら、どうぞ おっしゃってください」と。

 

そこでビィシュマの父は 作り話をした。

老人は そういうことが とても上手だ。

彼は こう言った。「おまえは わしにとってたった一人の ただ一人の息子だ。

現実には、誰ひとりとして信用できない。

もし おまえが死んだり、おまえの身に何かあったら、誰が わしの王国を継ぐだろう ?

そのことを知恵ある人達に話すと『それなら、もう一度結婚して、もう一人 別の息子をもうけることがよろしいでしょう』と言ったのだ」と。

そこで ビィシュマは言った。

「それの どこがいけないのでしょう ?

結婚なさればいいではないですか ?」と。

すると 父は言った。

「でも、難しいのだよ。 わしは その少女と結婚したいのだが、その父親が、ビィシュマが王国を継ぐべきではなく、自分の娘の 息子こそが、わしの王国を 受け継ぐべきだと 条件を出してきたのだよ」と。

すると ビィシュマは 言った。

「私の方は それで異存ありません。 約束します」と。

 

ビィシュマは、父の結婚相手の 娘の父に 会いに行った。

彼は こう言った。

「あなたに約束します。 私は父の王国を 受け継ぐつもりはありません」と。

だが その娘の父は、ごく平凡な、ただの漁師だった。

その娘の父は こう言った。

「わかりました。 でも、どうして私と約束できますか ?

あなたの息子さんが 問題を作り出すかもしれません。

私たちは ただの漁師です。 まったく どういうことのない人間です。

もしあなたの息子さんが問題を作り出せば、私たちには 何もできないでしょう」と。

そこで ビィシュマは言った。

「あなたに約束します。

私は 絶対に結婚しない と、それでいいですか ? 」と。

というわけで、全てが 解決した。

 

それは まったく 不自然なことだ。

彼は 若者だった。

その約束をしてから 一度も結婚しなかったし、肉欲的な目で 女性を見ることも 決してなかった。

それが 彼の成長になった。

そのことが 微妙な存在を、統合を、結晶化を 生み出した。

そうすれば、ほかの 宗教的 精神修行(サダナ)を する必要はない。

その事実だけで 充分だ。

彼は 結晶化された。

その約束だけで 充分だった ! 

 

そして彼は 別人になった。

彼は 垂直に 成長しはじめた。

本能的な 水平方向の 動きが止まった。

その約束をすることで、すべてが 止まった。

もう生物的に 女性と結ばれる という可能性は、なくなってしまった。

本能的なもの 全てが、無意味になった。

だが、ビィシュマの場合は 稀だった。

 

宗教的 精神修行なしで、その約束をすること以外に 何の宗教的努力なしで、可能な限りの 最も高い頂に達した。

 

単純な行為であれ 複雑な行為であれ、背後に 何の強制もなく、その行為を決断させるような自然の力もなく、その行為が あなたの決断であれば・・・

その決断を通して、 あ な た が 生み出される。

あらゆる決断が、あなたの誕生のために 決定的なのだ。

あなたは 別の次元へと成長する。

ゆえに、全ての行為、たとえ ごく平凡な行為であっても、それを利用しなさい。

 

 

(14)終わり(15)へ続く