saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第1話ーーー七段の梯子 (16)

小話をひとつ ーー
ある聖者が新しい弟子にこう言った
「宗教的な生き方についての お前の見解や
何がお前をそうさせたのかというようなことを すべて書き出してみるがよい 」

その弟子は引きさがると,それにとりかかった
1年後,師のもとに戻って来て言うには
「精一杯やってみました
まだまだ完成の域には遠いでしょうが
私の 道を求める苦闘の一端はこの中に見て取っていただけると思います」

師は その何千語に及ぶ作品を読むと
その若者にこう言った
「立派な出来だし,論旨もはっきりしているが
ちと長たらしいな
少し短くしてごらん」
そこで新米弟子は立去り
5年の後,たったの百ページにしてきた


師は 微笑み
それを読み終えると 言う
「ふむ,実に核心に迫りつつあるな
お前の思想は明快で力がある
だが,まだ ちょっと長い
もう少しまとめてみるがよい」


そこまでに達するには 大変な精進をしたものだから
若僧は がっかりして引きさがった
しかし 10年の後
彼は戻って来ると 師の前に深々と頭を下げ
ただの 5ページになったものを差し出してこう言った
「これが私の信仰のぎりぎりの心髄です」
私の人生の中核です
ここまでにしてくださった あなたの祝福を下さい」

師は ゆっくりと注意深く それを読むと
「実にすばらしいものだ」と言った
「この簡潔さと美しさ
だが,完成には いま一息だ
最後の清書をしてごらん」


そして,定められた時期が近づき
師が その最後を迎えようというとき
その弟子は ふたたび戻って来ると,師の祝福を受けるために膝まづき
何も書いていない一枚の紙を手渡した
すると,師は彼の友人の頭に手を置いて こう言った
「これで
これで お前もわかったね」ーー


その超越的な視界(ヴィジョン) から見たら




(17)最終回へ続く