saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第四章「第二の質問」03

……「第二の質問」03

 

(…アーナンダ(阿難)は 仏弟子の中でも 偉大なひとりであり、また もっとも そば近くにいた人間だった。

しかしブッダの在世中には、解脱を達成できなかった )

ブッダは アーナンダと ともに四十年過ごしたが、アーナンダは 達成できなかった。

ところが アーナンダより後に来た人々が たくさん達成した。

それが 問題となった。アーナンダはもっとも そば近くにいた ひとりだった。

四十年間、ブッダと ともに眠り、ブッダと ともに行動した。

ブッダに寄り添う影のようなものだった。

おそらくブッダ自身よりも、ブッダについては よく知っていただろう。

 

  ところが 彼は達成できなかった。

前と 同じままだった。

その唯一の障害は ごくありふれたものだった。

彼は ブッダの年長の いとこだった。

年長のいとこだった。それが エゴを生み出した。

 

  ブッダが死んだ。

そこで、ブッダの語ったことを 書き留めるため、大きな集会が 催された。

書き留めるなら 早いほうがいい。

ブッダと ともに生きた人々も そのうちいなくなる。

だから なんでも記録しておいたほうがいい。

だが会衆は アーナンダに委せなかった。

アーナンダこそ 誰よりも多く体験している人だった ーー ブッダの言行、その生涯、その来歴……すべて アーナンダは知っていた。

彼ほど知っている人は いなかった。

 

  しかし 会衆の決定により、アーナンダには 任せられなかった。

なぜなら、まだ 開悟(エンライト)していなかったからだ。

彼は ブッダの言葉を 記録できなかった。

無明の人間は 信用できないからだ。

欺いたりは しないだろうが、無明の人間は信用できない。

たとえば彼は、何々が起こったと 考え、それを 自分の知るかぎり 正しく叙述するかもしれない。

しかし 彼はまだ目覚めていない人間だ。

その眠りの中で なにを見ようとも、信用されることはない。

だから、記録するのは 目覚めた者だけ と決定された。

 

  アーナンダは 扉の すぐ外で泣いていた。

扉は 閉ざされ、 彼は 扉のすぐそばで 二十四時間、泣き叫んでいた。

だがアーナンダは 招かれなかった。

二十四時間というもの 彼は泣き続けた。

そして 突然、なにが障害だったのか 気づいた ーー なぜ自分が ブッダの在世中に到達することが できなかったのか、なにが障害だったのか ーー 。

 

  彼は 記憶をたどった。

ブッダとの 四十年にわたる生活を。

彼が 思い出したのは、入門(イニシエーション)を 求めて ブッダを訪れた最初の日のことだった。

入門のとき、 彼は ひとつの条件を設けた。

そのせいで入門を すっかり逃してしまった。

彼は 真の意味では、まったく入門していなかった。

条件を ひとつ設けたせいで、入門できなかった。

 

  そのとき彼は ブッダに こう言った、

「私は弟子になるために やって来た。

いったん弟子になったら、師である あなたの言うことには なんでも従うことになる ーー 服従が必要だ。 でも現在のところ、私は兄だ。 だから命じることができるし、あなたはそれに従わないといけない。 あなたは師ではなく、私も弟子ではない。 いったん入門すれば、あなたは 師となり、私は 弟子だ。 そうしたら なにも言えなくなる。 だから弟子になる前に、三つの条件がある。 この三つの条件を承諾してから、入門させてほしい 」

 

  その条件は べつに たいしたものではなかった。

だが条件は 条件であり、そのかぎりにおいて 明け渡しは 全面的ではない。

その条件は ごく小さなもの、まったく愛すべきものだった。

彼は言った、

「ひとつ、私はいつもあなたと ともにいる。 あなたは私に『余所(よそ)へ行け』と 行ってはいけない。 私が生きているかぎり、私はあなたの 影となる。 私に 去れと命じてはいけない。 それを約束してほしい。 これから先、私は ただの弟子になるから、もしも 去るように命じられたら、従わざるをえない。 でも私は あなたとともにいる。 それは兄に対する約束だ。 余所へ行け と言ってはいけない。 私は あなたの影となる。 私は あなたと同じ部屋で寝る」

「第二に、私が『この人間と会ってほしい』と 言ったら、いつでも その人間に会ってもらう。 どんなに合いたくない と思っても、承諾してほしい。 もし私が誰かに、あなたのダルシャンを、接見を与えたいと 思ったら、それを許してほしい」

「そして第三に、もし私が 誰かの入門を許すように言ったら、あなたは 拒否できない。 この三つの条件を 受け入れてほしい。 そのことを約束してから、入門させてもらいたい。 これから先は もうなにも求めない、なぜなら私は弟子になるのだから」

 

  このことを 思い出したとき……結集の扉の前で 泣き悲しみながら 自分の記憶をたどったとき、突然 彼は気づいた ーー そもそも入門など していなかった。

なぜなら 受容的でなかったからだ。

  ブッダは同意した。

ブッダは「よろしい」と 言い、一生 それに従った。

だがアーナンダは 逃した。

もっとも 近い者が 逃した。

 

  このことを 認識したとき、彼は悟りを開いた。

ブッダの在世中には 起こらなかったことが、ブッダの いなくなったとき起こった。

彼は 明け渡した。

 

  明け渡していれば、不在の師でさえ役に立つ。

明け渡していなかったら、生きて目の前にいる師でさえ 役に立たない。

だから 入門(イニシエーション)には……あらゆるイニシエーションには、明け渡しが 必要だ。

 

  マントラ・イニシエーションとは こういうことだ ーー あなたが明け渡し、師が あなたの中に入る……あなたの身体、あなたのマインド、あなたの精神へ入る。

師は あなたの中に入り、あなたのための 音を見つけ出す。

その音を 唱えれば、いつでも あなたは別人となり、別の次元に入ることができる。

 

  マントラが 与えられるのは、全面的に 明け渡したときだけだ。

 

 

……(03)おわり (04)へ つづく

 

 

 

 

 

タントラ秘法の書   第四巻

「沈黙の音」

ヴィギャン・バイラヴ・タントラ

 


講話   OSHO

翻訳   スワミ・アドヴァイト・パルヴァ

            (田中ぱるば)

発行者   マ・ギャン・パトラ

発行   株式会社 市民出版社