(09)
( 一度、自分が縛られていて「これは自分の家ではなく 監獄だ」とはっきり認識すれば、それを打ち破り、そこから逃げ出すために 何とかするだろう )
何か そのための仕掛けを使うこともできる。
今や、そのための何か 手はずを整えることができる。
そうなれば、監獄の外と 何らかの接触が持てる。
看守を 買収することもできれば 何か 手立てを打つことも できる。
だが、もしあなたが 自分は監獄の中に いるのではない、俺は 家にいるのだ、そして その看守は 家の見張り番であって、彼は俺のために働いているのだと 思い続けていれば、何ひとつ 見込めない。
もしあなたが 実際に監獄の中で 生まれたのなら ちょうど そんな具合だったろう −−−
あたかも、みんな自分のために働いてくれているような。
もしあなたが 監獄の中で生まれたのなら、監獄全体の構造が、自分のためにあるように思えるだろう。
とすれば、どうして ここが 監獄だなんて考えられるだろう ?
ここは監獄だと はっきり認識すること、それが、 監獄から抜け出すための 第一の 根本的なステップだ。
そうなれば 何かが 可能になる。
あなた方は 無意識だ。
そして、それは理論ではない −−− 単純な事実だ。
それは 神学ではない、単純な科学だ。
それは宗教と 宗教の仮説的神話学とも関わりない。
今や それは科学的な事実だ。
それが、フロイトが社会から ひどく軽蔑され
ひどく非難された理由だ。
歴史家たちは、過去に 三つの革命が起こったと言う。
一つは コペルニクスの革命だ。
コペルニクスは、「地球は宇宙の中心ではない。 太陽が地球の周りを回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っている」と 言った。
地球は その地位を追われ、王位は剥奪された。
そのことは、人間のマインドにとって 実に屈辱的だった。
地球が 宇宙の中心なら、人間もまた 宇宙の中心だからだ。
全てが人間の周りを回っていた。
なのに突然、地球は まったく宇宙の中心ではなくなった −−− 中心ではない というだけではなく 大して重要な星でさえない、ということになった。
その存在など無視できるほどの、あたかも 存在していないかのような地球が、太陽の周りを回っていることが明らかになった。
そして太陽 −−− 我々の太陽そのものも、より大きな ある太陽の周りを回っていることが明らかになった。
我々は 中心ではないと 明らかになったのだ。
そのあとに ダーウィンが現れ「人間は 神の親類ではなく、動物の親類だ」と 言った。
「人間は 神の末裔ではなく、尾なし猿、マントヒヒ、チンパンジーと 繋がっている。
人間は 長い動物の過程を経て 人間になった」と。
それが 二番目の革命 −−− たいへん屈辱的な まったくエゴを粉砕してしまうようなものだった。
地球は宇宙の中心ではなかった。
そして人間は、天使の次に値する存在ではなかった −−− 人間は動物より少し上等な存在、それ以上の存在ではない。
その「上等」ということさえ 確かではなかった。
人間は その王位を剥奪され、地位を追われた。
人間は ただの動物と なった。
そしてその後、三番目の革命が起こった。
それはフロイトの「人間は意識的な存在ではない −−− 人間は無意識の力の 手の内にある」というものだ。
ということは、アリストテレスは、フロイトによれば まったく間違っているということになる。
(09)終わり(10)ヘ 続く