saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第16章「二番目の質問」(09)


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二番目の質問 (09)

( 意志の道においては、あなたが 師であり、 弟子だ。

明け渡しの道においては、あなたは 弟子だ。

そして 時として、それは とても 骨が折れる )

 

バルクの王、イブラヒムが スーフィーの師の所にやって来て こう言った、「私は 自分の王国を捨てました −−− さあ、 だから私をあなたの弟子にしてください !」と。

すると その師は

「私が あなたを弟子として受け入れる前に、あるテストをして 合格しなければならない」と 言った。

イブラヒムは「ええ、 いいですとも −−− でも、待つことはできません。

だから、早くそのテストやらを やってください」と言った。

すると、師は こう言った、「それでは裸になって、あなたの住んでいる町中を廻りなさい。 私のサンダルを手に持って、自分の頭を叩き続けながら廻りなさい」と。

その場に 居合わせた者は 

それを聞いて ただただ呆然とした。

ひとりの老人が その師に こう言った。

「この憐れな男に、何ということを言うんだ ?

彼は 自分の王国を捨てたんだよ。 何を それ以上 要求することがあるかね ?

あなたは 何ということを言うんだね ?

わしは 今まで、こんな情景には 一度も お目にかかったことがない !

あなたも 今まで、そんな要求を したことがなかった !」と。

だがその師は

「この条件は 満たされねばならない。

私の言う通りやってから 戻ってきなさい。

そうしたら あなたを弟子にすることを考えよう」と言った。

 

イブラヒムは 服を脱ぎ捨て、師のサンダルを手に取り、自分の頭を 叩き始めた。

そして その格好のままで、町を通り過ぎた。

やがて彼は、師のところに戻ってきた。

すると師は イブラヒムにお辞儀をし、彼の足に 触れた。

そして師は こう言った。

「あなたは もう光明を得ていらっしゃるのですよ」

そしてイブラヒムは こう言った。

「私自身、突然の変化を感じていました。

私は 今までとは違う人間になりました。

でも不思議にも、どうやって あなたは私を 変えてしまったのですか ?

町中が私のことを笑っていました −−− 私が 完全に狂ってしまった と」

 

これが 明け渡しだ。

そうすれば、明け渡しで 充分だ。

それは 頓悟の技法だ。 それは 一瞬の内に機能する。

それは 一瞬の内に あなたを爆発させることができる。

表面的には たやすいように見える −−− 

探求者は 何もする必要がないかのように。

ただ明け渡すだけでいい、というように。

 

あなたがそう考えている と すれば 

それは明け渡しとは何かを 知らないということだ。

明け渡す とは、あらゆることを意味している。

もし 師が「海に 飛び込め !」と言えば 

躊躇することは 許されない。

明け渡しとは「もう私の意志は存在しません −−− 今や、 あなたの意志が 私の意志です。

だから何でも、 あなたの お好きなように なさってください」ということだ。

 

エジプトに、ダン・ナンという ひとりの神秘家が いた。

彼が 師と ともに暮らしている時 

彼は ある質問を しにやってきた。

すると師は こう言った、「私がお前に 質問しろというまでは 質問するな。 待ちなさい」と。

そして 十二年間、ダン・ナンは 待っていた。

毎朝、彼は 師のところにやってきた。

彼は 師の庵に入る 最初の人間だった。

彼は そこに座っていた。

ほかにも大勢の人たちが 師に質問するためにやってきて 彼らへの質問は答えられた。

師は 誰かに「待ちなさい !」とは言わなかった。

 

それは ダン・ナンにとって、余りにもひどい仕打ちだった。

しかし、ダン・ナンは 待ち続けた −−− 十二年間。

質問することは 許されなかった。

彼が 最初に 喋ったことは、「あることを お尋ねしたいのですが」という 言葉だった。

すると師は

「待ちなさい。 私が聞いてもよいというまで聞くな。 お前には聞くことは許されない。 待つのだ !」と 言った。

 

十二年間、彼は待った。

師は 彼を見ることさえしなかった。

師は 何ひとつ彼に、もう聞きにきてもいいと 

ほのめかすことさえなかった。

師は ダン・ナンという人間がいることを 完全に忘れていた。

 

ダン・ナンは 十二年間、昼も夜も 待ち続けた。

そして ある日、師が 彼のところに やってきて こう言った。

「ダン・ナン、もう聞く必要はない。

お前は あることを聞きに 私のところにやってきた。

さあ、そのことを聞くがいい。

だが、もう聞く必要はないと 思うがな」

ダン・ナンは 師に 頭を垂れ、師の足に触れ、こう言った。

「あなたは私に 充分な答えを与えてくださいました」

 

何が ダン・ナンに 起こったのだろう ? 

 

もしあなたが 完全に明け渡していなければ 十二年間も 待っていられるものではない。

 

 

(09)終わり(10)へ 続く