saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第5話 ーーー 〈無〉の香り (21)

…( 第一に 我々は
“ それゆえに ” という言葉を理解しなければならない )

“それゆえに” というのは ひとつの演繹(えんえき)の中でなら
ひとつの 論理的議論の中でなら 完璧に意味をなす

ところが,そこに 何ひとつ先行する議論がないのに
仏陀は “それゆえに,おおシャーリプトラよ” と 言う

学者たちは
なぜ彼が “それゆえに” を 使うのかについて
ひどく頭を悩ませてきた
“それゆえに” というのは 三段論法なら意味をなす

あらゆる人間は 死をまぬがれない
ソクラテスは ひとりの人間だ
それゆえに,ソクラテスは 死をまぬがれない ーーー

それは 論理の一部なのだ
そこに 何の命題もなく何の議論もないところへ
突然,仏陀は “ それゆえに ” と 言う
なぜだろう ?


学者たちには それが 理解できない
表面的には,そこには 何の議論も されてきていないからだ
だが,そこには
仏陀とシャーリプトラの 目と目の あいだには
ひとつの〈対話〉が あった
そこには ひとつの〈理解〉が 湧き起こっている
仏陀が 空(くう)について,無について 語るのを聞いていて
シャーリプトラは〈無〉の そのレベルまで浮かび上がっていたのだ
それは ここにいる あなたの中にも 湧き上がり得る
あなたは それを感じることができる
その翼が あなたのまわりを 羽ばたいているのだ


彼の 目を見て
仏陀は シャーリプトラが理解した というのを感じ取る
見抜く
そうなれば,議論は さらに遠くまで進むことができる
表面的には そこには何の議論もない
そこには 何の討論も なかった
だが,そこには ひとつの〈対話〉が あったのだ

その対話は これら二つの エネルギーの間の ものだった
仏陀と シャーリプトラ ーーー
そこには ひとつの〈統一 (ユニティー)〉が あった
彼らは 橋渡しされていたのだ
その橋において
橋渡しの その瞬間において
シャーリプトラは 仏陀の〈空〉を のぞき込んだのだ

そこで 仏陀は言う
“ それゆえに・・・”
あなたは 見たね,シャーリプトラよ
いまや 私は その中に仔細にわたって
さらに遠く はいって行くことができる
いまや 私は
以前には不可能だったであろう いくつかのことを あなたに語ることができるのだ,と



(21)終わり・・・(22)へ 続く