saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第5話 ーーー 〈無〉の香り (22)

“ それゆえに,おおシャーリプトラよ,空においてそこにはいかなる形象もなく感覚もなく,知覚もなく・・・”


そこに 誰も 感じるような人が いない以上
どうしてそこに 感覚があり得よう ?
そこに 自我(エゴ)がないとき
そこには何の感覚も,何の知識も,何の知覚もない
何の形も 現われてこない
空(そら)は 完全に雲ひとつないからだ
雲の中には 形が見える
ときとして観察したことが あるだろうか ?
ひとつの雲が まるで象そっくりに見える
すると,それは馬に 変わってしまう
それから また何か ほかのもの・・・
そうやって,それは変わり続けてゆく
それは たくさんの形を取る
だが,純粋な 空(そら)の中に
何か形が 現われてくるのを見たことがあるだろうか ?
形など 何ひとつ現われようがない


“ そこにはいかなる形象もなく,感覚もなく,知覚もなく,衝動もなく・・・”


そして,内側に 誰もいないとき
どうして衝動が 出て来れる ?
どうして欲望が 湧き上がれる ?


“・・・意識もない ”


そこに 何の中身もないとき
そこに 何の客体もないとき
主体も また 消え失せる

つねに客体を意識していた その意識は
もうそこには 見つからない


“ 眼も,耳も,鼻も,舌も,体も心もない ”


仏陀は言う
「すべては その無の中に消え失せたのだ,シャーリプトラよ
それゆえに,私は それを語っているのだ
あなたは それを見た !
あなたは私の中を のぞき込んだ !
あなたは まさに その瀬戸際に立っていた
あなたは その奈落,その永遠
その底しれぬ深みを のぞき込んだ 」


“ 形もなく,音もなく,匂いもなく,味もなく,触れられるものも,心の対象もない。視覚組織の領域から心意識の領域に至るまで・・・”


その境地に いるとき
あなたは「自分は この境地にいる」と言うことすら できない
というのも
もしそんなことを 言うとしたら
あなたは戻って来てしまっているのだから ーーー
もしあなたが「自分は もう経験した」などと 言うとしたら
それはあなたが 形象の世界に 戻って来ていることを 意味するにほかならない
心(マインド) が ふたたび機能しはじめているのだ
そ の 瞬 間 において
あなたは〈無〉と 別々ではない
だとしたら,どうして
「自分は もう経験してしまった」などと 言うことができる ?
〈無〉というのは ひとつの対象のようなものじゃない
それはあなたと 別々のものじゃない
あなたはそれと 分離してはいない
観察者が,そ こ では 観察されるもの なのだ
客体が,そ こ では 主体なのだ
二元対立は 消え失せている


そこには何の知識もなく
そこには また何の無知もない



(22)終わり・・・(23)へ 続く