saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第3話 ーーー 知識は禍いなり(12)

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“ ここでは,おおシャーリプトラよ,一切のダルマは形(くう)の様相を呈している。 それらは生み出されることも止められることもなく,汚されることも清浄であることもなく,足りないことも完全であることもない。 ”


仏陀は 一切のダルマは〈空〉で 満ち満ちているという
その〈無〉は,あらゆるものの中核に存在する
その〈無〉は,樹の中に存在する
その〈無〉は,岩の中に存在する
その〈無〉は,星の中にも存在する
いまや科学者たちも同意するだろう
彼らは ひとつの星が崩壊すると
それは ブラックホール,〈無〉になると言う
けれども その〈無〉は ただの無ではない
それは ものすごい力を持ったものだ
それは とても満ち満ちていて
あふれ出している
ブラックホールの概念,仮説は
仏陀を理解するのに 莫大な価値を持っている
ひとつの星は何億年,何兆年の間 存在する
が,ある日 それも 死ななければならない
何もかも,生まれるものは 必ず死ななくてはならない
人間は 70年の間 存在する
それから どうなるか ?
消耗し,疲れ切って
彼は 消え失せる
彼は初源の〈統一 (ユニティー)〉の中へと 沈み込んでゆく
それと同じことが
遅かれ早かれ あらゆるものに 必ず起こるのだ !
ヒマラヤも ある日 消え失せるだろう
同じように,この地球も ある日消え失せるだろう
だが,大きな星が消え失せるとき
それは どこへ 消え失せるのだろうか ?

それは それ自身の中へと崩壊してゆく
それは とてつもなく大きな塊だ
それが崩壊する

ちょうど人が歩いていて
ひとりの老人が道を歩いていて崩れ込んでゆくようなものだ
もし,その人を そのままそこに置いておけば
骨までが 埃に帰ってゆくだろう
その人は,ある日 そこを歩き
生活し,愛し,闘っていたのに
それがいまでは
一切が ブラックホールに消え失せてしまっている
それと同じことがひとつの星にも起こる
星が それ自身の中へ崩壊してゆくと
それは ひとつのブラックホールとなる
なぜそれは ブラックホールと呼ばれるのか ?
いまやそこには何の塊もないから
そこにあるのは ただ純粋な〈空〉
仏陀が “ シュンニャータ (sunyata) ” と呼ぶものだけだからだ
そして,そのシュンニャータ,その純粋な〈空〉の あまりの力は
もしその影響下に,そのそばに
その付近に やって来ようものならば
ぐいぐいと 引っぱられて,〈空〉の中へと引きずり込まれて
あなたもまた崩壊し,消え失せてしまうほどなのだ


宇宙旅行にとって,そのことは将来の問題になろうとしている
なぜならば,ブラックホールになった星は たくさんあり
それが無であるために,それがただの不在であるために
それは 目には見えないからだ
それは 目には見えない
が,それに行き当たることはできる
もし宇宙船が そのそばに,その引力圏内にやって来ると
それは ただただ引きずり込まれてしまうだろう
そうなったら,もう脱け出す方法は何もない
そこから脱け出す道を見つけ出すことは不可能だ
その引力が あまりにも強すぎるのだ
宇宙船は あっさりと引きずり込まれ
消え失せ,崩壊してゆくだろう
そして,その宇宙船について 二度と話を聞くことはあるまい
それがどこへ行ってしまったのか ?
それに何が起こったのか ?
宇宙旅行者たちが どうなってしまったのか ? ーー


このブラックホール仏陀の空(くう) の概念にごくごく近似している
一切の形象は崩壊し,漆黒の中へと消え去ってゆく

そして,それが長い間 休息すると
それらは湧き上がってくる
ふたたび ひとつの星が生まれる
これが続いてゆく
生と死,死と生 ーー
これが続いてゆく

これが 存在の進み方なのだ


まず それは 顕在となり
そして,疲れると 非顕在へと進む
そしてまた休息,くつろぎを通じて そのエネルギーを取り戻すと
ふたたび 顕在となる

あなたは 一日中働いて 疲れたら
夜には あなたの眠りの中に,ブラックホールの中に消え失せる
明かりを消して ふとんにもぐり込むと,目を閉じる
すると,またたく間に 意識はなくなる

あなたは 内へ向かって崩壊したのだ
そこには夢さえも もうなくなる瞬間がある
そのときには,眠りは最も深いところに来ている
その深い眠りの中で
あなたは ひとつのブラックホールに はいっているのだ
あなたは 死んでいるのだ
つかの間,あなたは 死の中にいる
死の中に休息している
そうして,朝になるとあなたは また戻っている
元気一杯,情熱と はちきれるような生気と生命に満ちて
ふたたび 若返っている
もしあなたが 夢のない,本当によい深い眠りを眠ったとしたら
朝は 本当に 新鮮で,本当に 活気に満ちている
あなたは もう一度若返っているのだ

もしどうやって深く眠るかを知っていれば
あなたは 自分自身を何度も何度も生き返らせる方法を知っていることになる
夜になるまでに,ふたたびあなたは崩壊の途上にある
日中の活動に疲れ切って,消耗している


同じことが あらゆるものに起こる
人間というのは 全存在の ミニチュアなのだ
人間に起こることは 全存在に 起こる
スケールが 大きい
それだけのことだ

毎晩のように あなたは 無の中に消え失せる
毎朝,あなたは 形象の中に帰ってくる
形, 無形, 形 ーー
これが 生の動き方だ
それが生の足どりなのだ


“ ここでは,おおシャーリプトラよ,一切のダルマは空(くう)の様相を呈している。 それらは生み出されることも止められることもなく・・・”



(13)へ 続く