saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第5話 ーーー 〈無〉の香り (06)

…( 知識を棄てなさい !
私は あなた方に 知識の放棄を教える
私は 世間の放棄など教えない )

それは つまらないことだ
愚かしい
無意味だ !

私はあなた方に 知識の放棄を教える
ところが,おかしなことが 起こるものだ
私は 世間を捨てた人たちと 行き会ってきた
ヒマラヤで
私は ひとりのヒンドゥー教の 托鉢僧に出会った
非常な年寄りだ
90歳か
ことによったら それ以上に違いない

70年間,彼は サンニャーシンだった
70年間,彼は 社会の外側で生きてきた
彼は 社会を棄てた
彼は 70年の間 平地に戻ったことがなかった
まだ 20歳の若者のとき
彼は ヒマラヤに 行った
そして,それ以来 彼は二度と故郷へ 帰らなかったのだ
彼は 二度とふたたび〈群衆〉の中に 戻らなかった

ところが 彼は依然として ヒンドゥー教徒のままだ
依然として 自分を ヒンドゥー教徒だと 思っている


私は彼に こう話した
「あなたは社会を 棄てはしました
けれども,自分の知識を 棄てていません
そして,その知識は 社会によって与えられたものです
なぜならば
ヒンドゥー教徒でいる ということは 群衆の中にいる ということだからです
あなたは依然として まだ〈個〉ではない
あなたは まだ〈無〉には なっていないのです 」


その老人は 私の言うことを理解し
そして,泣きだした
彼は言った
「いままで 誰ひとりとして
これを 私に 言ってくれた人はいない 」,と


あなたは 社会を放棄することはできる
富を放棄することはできる
奥さんを,子供を,旦那さんを
家族を,両親を放棄することは できる
それは 簡単だ
たいしたことは 何もない
本題は 知識を放棄する ということだ
こういうものは あなたの外側のものだ
あなたはそれから逃げ出すことはできる

だがどこに どうやって,あなたは何か 自分の内側にあるもの
そこに こびりついているものから 逃げる ?
それはあなたに くっついて行くだろう
あなたは ヒマラヤの洞窟に行くことも できる
そして,あなたは ヒンドゥー教徒のままでいる
あなたは 回教徒のままでいる
あなたは キリスト教徒のままでいる
それでは,ヒマラヤの美や 真実を見ることなど できまい
あなたは 見 る ことが できまい

ヒマラヤの あの純潔ーーー
ヒンドゥー教徒」には それを 見ることなどできない
ヒンドゥー教徒」というのは 盲目だ


ヒンドゥー教徒」でいる ということは 盲でいるということだ
「回教徒」でいる というのは 盲でいるということだ
盲になるのに あなたは いろいろと違った道具を使うかもしれない
それは 問題じゃない
ある人は コーランのせいで 盲であり
別な人は バガヴァッド・ギータのために盲であり
そしてまた ある人は バイブルのために 盲になっている
だが,とにかく 目が 知識で一杯に塞がっているのだ


仏陀は言う
〈無〉が 知性を機能させる,と
ブッダ (buddha)” という言葉は
“ブッディ (buddhi)” から来ている
それは “知性” という意味だ
あなたが ひとつの〈無〉であるとき
何ものも あなたを閉じ込めないとき
何ものも あなたを限定しないとき
何ものも あなたを包含しないとき
あなたが 開放しきっているとき
そこに 知性が ある
なぜか ?
それは,あなたが〈無〉であるときには
恐怖が 消え失せるから
そして,恐怖が 消え失せたとき
あなたは知性的に機能するものだからだ
もしそこに恐怖があったら
あなたは 知性的に機能することなど できやしない
恐怖は あなたを かたわにする
あなたを 麻痺させる


あなたは恐怖がゆえに さまざまなことを やり続ける

あなたが あなたの生得権であるところの ひとりのブッダになれないのは そのためなのだ !

あなたは恐怖がゆえに 徳を積む
恐怖がゆえに お寺参りをする
あなたは 恐怖がゆえに ある一定の儀式に従う
あなたは 恐怖がゆえに 神に祈る
しかし,恐怖を通して生きるような人は 知性的でなどあり得ない
恐怖というのは 知性の毒なのだ

もしそこに恐怖があったら
どうして あなたが 知性的になれよう ?

その恐怖は さまざまな形で あなたを引きずりまわし続けるだろう
それはあなたが 勇敢になることを許すまい
それはあなたが〈未知〉の中に足を踏み込むのを許すまい
それはあなたが ひとりの冒険家になるのを許すまい
それはあなたが 羊の群れを
〈群衆〉を 離れるのを許すまい
それはあなたが 独立するのを
自由になるのを 許すまい
それはあなたを 奴隷のままにしておこうとするだろう
そして,我々は数え切れないほどの さまざまな意味合いで 奴隷なのだ
我々の 奴隷状態は 多元的だ
政治的,精神的,宗教的ーーー

あらゆる意味で 我々は奴隷だ

そして,その根本原因が 恐怖なのだ


(06)終わり・・・(07)ヘ 続く