saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第9話 彼方からのメッセージ (05)



(…ただ自分がたまたまヒンドゥー教の家庭に生まれたというだけのことなのだ )


ときにはこういうことも起こり得る
あなたはクリスチャンの家庭に生まれた
にもかかわらずあなたはヒンドゥー寺院に行きたがる
それもまた一種の条件づけだ
また別な種類の条件づけだ
もしかするとあなたの両親があまり行き過ぎたクリスチャンで
あなたはそのあまりのナンセンスを受け容れることができなかったのかもしれない
それには限界がある
あなたは敵対するようになり
それに反逆しはじめた
あなたはそれに対する反動家になる
彼らときたら
首に縄をつけてでもあなたを教会に引っぱって行った
そして彼らには力があり
あなたは小さな子供でどうすることもできなかった
あなたは無力だった
けれども,あなたはいつも
「いまに見てろ」と思っていた
あなたがそれだけの力を持った日
あなたは教会に行くのをやめた
さて,この「いまに見てろ」という考えは
教会に関する彼らの脅迫観念によって植えつけられたものにほかならない
それはまたしてもひとつの催眠術だ
方向は逆だ
が,それは依然としてひとつの催眠術なのだ
あなたは反動している
あなたは自由なんじゃない
もし教会に行きたくても
あなたは行けないだろう
自分自身を引き戻している自分を見出すことだろう
あなたが行かないのは
それが以前両親があなたを連れて行った教会だからだ
あなたはこういう教会に行くわけにはいかない
あなたはヒンドゥー教徒になることだろう
あなたは自分の親たちがけっして望まなかったようなことをやりはじめることだろう


それからもうひとつ
あなたが自由でないのはただ条件づけという問題だけじゃない
あなたが二者択一をするとき
それら二つのものについて
もしかすると誰もあなたに条件づけしていないこともあり得る
世の中にはあなたが全然条件づけされたいない何百万という物事があるのだ
あなたが二者択一をするとき
その選択は混乱から出たものかもしれない
そして,混乱から出たとしたら
そこには何の自由もあり得るはずがない
あなたはこっちの女の子と結婚しようかあっちの女の子と結婚しようかと迷う
あなたはどうやって決めるつもりかね ?
あなたは混乱してしまう


毎日のように
私はいろいろな人たちからの手紙を受け取っている
「私は二人の女性の間に引き裂かれています
どうしたらいいでしょう ?
こっちの女性は肉体的にきれいで,プロポーションもよく
とてもとてもきれいな目をしていて
一種独特な魅力があります
体はピチピチと輝くばかりで,生き生きしています
けれども心理的には実に醜い限りです
もうひとりの女性は
心理的にはビューティフルなのですが肉体的に醜いのです
さてさてどうしたらいいでしょう ? 」と言うのだ
そうして,あなたは二つに引き裂かれている


結婚を考えていた男の話を聞いたことがある
彼はひとりの女性に恋をしていたのだが
彼女はとても貧しかった
彼女はきれいだった
が,彼女はものすごく貧乏だった
そしてもうひとりの女性がいて,彼に恋をしていたのだが
そっちの方はとても裕福であるにもかかわらず非常に醜かった
けれども,ひとつ彼女の中でもビューティフルなものがあった
彼女の音
彼女の声だ
彼女は大変な歌い手だった
さて,彼は分裂してしまった
美人の方の女性はそんな声はしていなかった
玉を転がすような声ーーー
それも彼は音楽が大好きだったのだ
彼女はきれいな顔をしていた
けれども,彼にとっては外形は声ほど重要じゃなかった
そして,さらに彼は貧乏だった
だから彼は
たくさんのお金を持って来て生活を安定させてくれ
自分が心ゆくまで音楽に没頭できるような女の人を求めていた
お金とかその手のことに心配しなくてもいいようにーーー
彼は自分の一生を音楽に捧げたかった
その女の人には二つのものがあった
お金と,そしてきれいな声ーーー
だが,彼女はまったくのブスだった
彼女を見るのも大儀だった
彼女の顔はぞっとするほどだった
貧乏の女性の方はきれいだったが
彼女の声は十人並で,彼女にはお金もなかった
だから,もしその女性を選ぶとしたら
彼は音楽との “情事” をあきらめなければならない
彼はどこかの馬鹿馬鹿しいオフィスの事務員か
あるいは先生か何かにならなければならない
そして,そうなったら彼は音楽に身を捧げられなくなってしまう
音楽は全面的な献身を必要とする
音楽というのはとても嫉妬深い “情婦” だ
ん? それはあなたにどこへも行かせない
それはあなたを完全に,全面的に飲み込みたがる
そこで彼は分裂してしまった


しかし,最後には彼の音楽への愛が勝利をおさめ
彼は醜い方の女性と結婚した
彼は家に帰って来た
彼らは眠った
夜の暗闇は大丈夫だった
その女性を見なくて済んだからだ
だから問題は何もなかった
しかし,朝になり
日の光が差し込んできて,彼が目を覚まし
その女性の顔をひと目見ると
それはなんともぞっとするようなものだった
彼はその女性を叩き起こすと
「歌ってくれ !
早く歌ってくれ !
いますぐに歌ってくれ ! 」と言った
とにかくその醜さから身を守るためだ


人々は私に手紙を書いて
「私は二人の女性の間に(あるいは二人の男性の間に)
引き裂かれてしまっています
どうしたらいいでしょう ? 」と言う
こういう混乱が起こるのはあなたに動機があるからだ
そこには何か動機がある
お金,音楽,生活の安定ーー
そこには何も愛がない
あなたが分裂するのはそのためだ
もしそこに愛があったら
もしそこに激しい愛があったら
熱烈な愛があったら
そのときには何も選択などあるまい
その熱情が自分で決めるだろう
あなたが選ぶ必要はない
あなたは分裂することもあるまい

しかし,人々はそれほど知性的じゃない
そしてそれほど強烈でもない
彼らは生をとても生ぬるく,まあまあに生きる
彼らはそれを強烈に生きない
彼らの人生には何の火もない
本当の自由は
あなたの生が一瞬一瞬あまりにもトータルで
決める必要など何もなくなるぐらいになって初めて起こるものだ
そのトータリティーが決定する
わかるかね ?
そのトータリティーそれ自身が決定する
あなたはこの女性と結婚するかあの女性と結婚するか
二者択一を迫られたりはしない
あなたのハートは全面的にひとりの方についている
そこには何の動機もない
したがってあなたは分かれてもいない
そして,そこには何の混乱もない
もし混乱から決定したら
あなたは争いをつくり出すだろう
混乱はあなたをさらに深い混乱へと引きずり込むものだ
けっして混乱から決定しないこと


クリシュナムルティ
無選択性について語り続けているのはそのためだ
無選択性こそ自由なのだ
あなたは選ばない
あなたはただただトータルな強烈さと化す
あなたはただ完全に目を見張り
醒めて
注意深くなる
たとえば,あなたが私の話を聞いている
あなたはそれを生ぬるい聞き方で聞くこともできる
半分眠って半分起きて
あくびをしながら,千と一つの物事を考えている
計画を立てている
昨日の夜のことがいまだにまとわりついている
千と一種の引っかかりーーー
そして,あなたは話も聞いている
そうすると
そこに私が〈真実〉を語っているかどうかという問いが出てくる
もしあなたが情熱的にきいていたら
もしあなたが完全に い ま こ こ にいたら
まさにその情熱そのものが決定するだろう
その強烈さの中で
あなたは何が〈真実〉かを知るだろう
もし私が何か真実なことを言ったら
それは即座にあなたのハートを打つに違いない
なぜならば
あなたはそれぐらい知性的になっているだろうからだ
どうしてそのあなたが見のがせる ?
あなたの知性は
これ以上はないというくらいに目を見張っているだろう
どうしてそのあなたが見のがすことができる ?
そして,もし何か真実でないことがあったら
あなたは即座にそれを見抜くだろう
そのヴィジョンはその場でやって来る
そこに
「自分はこの人について行くべきかどうか」という
あなた側の決定など何もあるまい
それは混乱から出てくるものだ
あなたはまだ私を 聴 い た ことがない
私を 見 た ことがないのだ
そのポイントを見てごらん !
〈真実〉については
賛成したり反対したりする必要はない
〈真実〉はトータルに聴かれなければならない
それがすべてだ
感受性をもってーーー
すると,まさにその感受性そのものが決める
あなたは 見 る
あなたはたちまちその真実を感じ取る
まさにそのフィーリングにおいて
あなたは〈真実〉の中に足を踏み入れているのだ
賛成したり反対したりするというのじゃない
私に説得されたり改心させられるというのじゃない
私は誰も改心させてやしない
〈真実〉が改心させるのだ
そして,〈真実〉というのは “信条” じゃない
そして,真実というのは議論でもない


真実とは〈現存〉だ
もしあなたが現存していたら
あなたはそれを感ずるだろう
もしあなたが現存していなかったら
あなたはそれを感ずまい



(06)へ続く