saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第七章 「宝もの The treasure 」 (09)

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こんな夢を見た。

長年に亘るひどい困窮も
エイシクの神に対する信頼を揺るがすことはなかった
彼は夢を見た
何者かが、プラハの王宮に通じる橋の下にある宝物を探せと命ずる夢だ


貧しい人は 常に、王宮や 王の宝物などを夢見る。

とても豊かになった夢を見るとすれば、それは単に 貧しい人間であることを 示すものでしかない。
とても豊かな人、仏陀や マハヴィーラのような人しか、サニヤシンになる夢は見ない。
王宮に住みながら、彼らは サニヤシンになる夢を見た。
成功というものに 飽き飽きしたからだ。
彼らにとって 成功は 意味を失った、もはや惹きつけられることも、魅惑されることも、心 躍らされることもなくなった。
いまや、貧しい人の生が 本当の生である と考えるようになり、自分のいる場所とは 異なる別の場所を探し求めた。

しかし、常に 夢は別の場所に行く。
金持ちは 貧乏人が 本当の生を送っていると考え、貧乏人は 金持ちが 本当の生を送っていると考える。

だが、 同じ間違いをしている。
両者はともに、「真の生は 自分のいるところではなく、別のところにある。
どういうわけか、私は いつも本当の生から排除されている。
他の人が それを楽しんでいる。
生はいつも、どこか別のところで 起こっている。
どこへ行っても、生は消え失せる。
どこで生に辿り着いても、いつも 空っぽだ」と 考える。
生はいつも、どこか別のところで起こっている。
それは、常に前方にある地平線のようなもの。
生は 蜃気楼だ。


三度その夢を見たとき、エイシクはプラハに出かけた


覚えておきなさい。
夢でも、あまりに何度も繰り返されると 真実とさえ思えてくる。
繰り返しは 物事を真実化する。

アドルフ・ヒットラーは、自伝『我が闘争』の中で、嘘を繰り返せば 真実になると書いた。
繰り返しが 鍵だ。
ヒットラーは、そのことを知っていて 実践した。
理論的なことを 主張しただけではなく、生涯に亘って実践した。
ヒットラーは嘘を、まったく馬鹿げた嘘をついた。
だが 一つのこと、繰り返し続けることに 力点を置いた。
何度も何度も 嘘を繰り返し続けると、真実になっていく。
反復によって、マインドが催眠術にかかりだす。

反復が催眠の方法だ。
何かを 繰り返せば、それが実存の中に 彫り込まれる。
そうやって 私たちは、生において欺かれる。
もし、「この女性は美しい、 この女性は美しい」と 繰り返し続けると、その人の中に、美を 見出し始めるだろう。
美は そこに あるかもしれないし、ないかもしれないが、そんなことは どうでもいい。
長い間 繰り返していれば 真実になる。
お金が 人生の目的だと 繰り返し続ければ、それが 人生の目的になる。


広告は皆、そうした働きを持っている。
広告は ただの 繰り返しに過ぎない。
広告の製作者は、反復の 科学的な力を信じている。
製作者は、この銘柄の煙草が最高だ と、ひたすら繰り返し続ける。

初めてそれを読んだときは、信じられないかもしれない。
だが 次のとき、何度も繰り返されたとき ーー どれくらい信ぜずにいられるだろうか。
やがて 信じるようになる。
だが、 信じるようになったことを 意識すらせずに、信じるようになるのだ。

それは 閾下 (サブリミナル)、意識の 直下で起こる。
ある日、あなたが 店に行き、 店主に どの煙草にするか 尋ねられたとき、突然 あなたは ある銘柄を口にする。
反復が 功を奏した、反復が あなたを催眠術にかけたのだ。


そのようにして、世間では 宗教が力を発揮している。
また、政治も 反復に基づいている。
宣伝、繰り返しを続けること、大衆が 信じようが 信じまいが 気にしてはならない、信じる信じないが 要点ではない。
ヒットラーは、真実と嘘の違いは ひとつしかない と言っている。
真実というのは、しょっちゅう 繰り返される嘘のことだ。
人は どんな嘘でも信じる。
人は 限りなく騙されやすい。
天国だって、天使だって、悪魔だって 信じる。
人は 何でも信じる。
繰り返すだけでいい。

議論する必要はない。
広告には 議論がない。
そのことを観察したことがあるだろうか。
議論の必要はない。
広告は説得するだけで 議論をしない。
議論する人は、あなたを 信じさせることは できないだろう。
だが 説得しようとする人は、直接 議論するのではなく、そっと 暗示をかけ続ける。

議論すれば、あなたが 防衛の態勢に入りかねないからだ。
しかし、直接に ではなく、思い込ませるように暗示し 続けるだけなら、信じさせやすくなるだろう。

そのように夢は機能する。
夢は セールスマンだ。
夢は ひたすら夢を 繰り返し続ける。
けっして議論しない、しきりに繰り返すだけだ。
そして、しばしば繰り返されると 人は信じ始める。

三度 その夢を見たとき ーー



(09)終わり・・・(10)へ 続く