saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第七章 「宝もの The treasure 」 (10)

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三度 その夢を見たとき ーー


エイシクはプラハに出かけた
しかし、橋は昼夜見張られていたので、掘り始めようとはしなかった


世の中には 多くの競争がある。
どこもかしこも見張られているから、目的のものを得るには 闘わなければならない。
それは容易なことではない。
世にも不思議な話だ。
意味あるものは何もないのに、何を得るにも 闘わなければならないとは。
重要なものなど 何一つないように思えるのだが、 多くの競争や闘いがある。
あらゆる人が 殺到する、それが問題を 引き起こす。
その中に何かが あるというのではない、何もない。
けれども、あらゆる人が それを求めて殺到する。
誰もが 自分の居場所以外のところを 熱望し、世界は とても混雑している。

実際には、見かけほど 混雑してはいない。
見てごらん、私たちは ここに座っている。
皆が自分の場所に座っている。
この場所は、少しも混雑していない。
だが、もし突然 あなたたちの心が狂乱し、皆が 他人の場所に行こうとしだせば、ここは 混雑するだろう。
今 現在、あなたたちは 恭しく座っている。
狂乱した状態では、相手を出し抜こうと 互いに突進し合うだろう。
今 現在、あなたたちは自分の場所に満足しており、誰の場所も望んでいない ーー 少なくとも 荘子オーディトリアムでは。
だが、他の人のところへ 押し入ろうすれば、他の人たちは 守ろうとして、あなたを はねつけるだろう。
その結果、闘いや戦争が起こる。

なぜ、この世には これほど多くの戦争があるのだろうか。
それは、皆が 他人の領分を 手に入れようとするからだ。
また、相手も 同じことをしようとするだろう。
その人も あなたを見ているだろう。



しかし、橋は昼夜見張られていたので、掘り始めようとはしなかった
それでも毎朝橋に行き、夕方まで辺りをうろうろしていた



それこそ、多くの人々がやっていることだ。
成功する人は ほとんどいない、多くは うろうろしているだけだ。
人々は うろうろし続ける。
たとえ成功できなくとも、あなたの欲望、希望は絶えずそこにある。
その場所に、そのそばに行けるということまでは確かだが、歩き回るしかない。
朝から晩まで、一日中 彼はうろうろしていた。
それこそ多くの人々が、奇跡でも起こるのを 期待しながらやっていることだ。
いつか 見張りがいなくなるかもしれない、いつか 休日になるかもしれない、掘るチャンスが生まれるかもしれない・・・人は 待ちに待ち続ける。
だがそのときは けっしてやって来ない。
待ち続け、全人生が 浪費される。



それでも毎朝橋に行き、夕方まで辺りをうろうろしていた
とうとう、その様子を見ていた守衛の頭が
エイシクに何か探し物をしているのか
それとも誰か人を待っているのかと優しく尋ねた
ラビのエイシクは、遠路はるばるここまで来ることになった夢の話をした
頭は笑った、「では、その夢を叶えるため
靴をすり減らしてここまでやって来たというのですか ! お気の毒に
夢を信じるにしても
もし私がその夢を見たのであれば、クラクフに行って
イエケルの息子であるユダヤ人、エイシクの部屋の
ストーブの下にある宝物を掘っただろう
それが、その夢のお告げだ
しかし、それがどんなものか考えてみたまえ
クラクフでは、ユダヤ人の半分がエイシクという名で、あとの半分がイエケルだ」
と言って再び笑った
ラビのエイシクはお辞儀をして、家に向かった
そして、自分の家の、ストーブの下から宝物を掘り出し
エイシクのシュルという名の、祈りの家を建てた



すばらしい話だ。
しかも、まさしく真実だ。
それこそ 生で起こっていること。
あなたは、すでに 自分の内側にあるものを、どこか別のところで 探している。
ラビのエイシクは お辞儀をして その男に感謝し、家に向かった。

家に帰る、 これが宗教の旅だ。
生を 理解している人は、生が 夢から打ち覚ましてくれたがゆえに、絶えず 生に対して 敬意を払う。
その人は 生に反しない。
自分が 生と無縁であったこと、誤った方向を探していたことを わきまえている。

生は 常に 慈悲深く、「ここでは 何も見つけられない。 家に 帰れ 」と 何度も あなたに言ってきた。
だが、あなたは 聞かない。

あなたは お金を稼ぐ。
そして いつか、お金が貯まる。
すると生は、「何を 手に入れたというのか ?」と 言う。
だが、 あなたは 聞かない。

今度は、お金を 政治につぎ込み、首相や大統領にならなければならない、なれればすべてがうまくいく、と あなたは考える。
ある日 あなたは首相になる。
生は 再び「何を 手に入れたというのか ?」と 言う。
あなたは 聞かない。
あなたは、次から次へと 他のことを考える。
生は 広大だ。
それゆえ、多くの生が 浪費される。

だが、 生に腹を立ててはならない。
あなたを 苛立たせているのは 生ではない。
苛立たせているのは、生に 耳を貸さない あなただ。
私は 生に反するか 否かを 判断の基準、試金石にしている。
生に反している、強く反している聖人を見かけたら、その聖人は まだわかっていないものと、しっかり わきまえなければならない。
わかっていたら、深い尊敬や崇敬の念をもって、生に ひざまずくだろう。

生は いつも、夢から覚ましてくれたのだから。
だからこそ、生はきわめて衝撃的なのだ。
生は 苦痛だ。
その苦痛は、あなたが 不可能なことを 望んでいるために生じる。
それは、生にではなく あなたの期待に 由来する。

人々は、人間が提案し 神が処理する と言うが、そうなったことは 一度もない。
神が 人を扱ったことなど 一度もない。
あなたが自分で提案し、自分で 処理してきたのだ。

神の提案を聞いて、自分の提案は しまっておきなさい。
静かにして、全体が 望んでいることを 聞きなさい。
個人的な目標を持とうとしたり、個人的に要求したりしてはいけない。
全体は 進むべき方向に進んでいる。
ただ その一部に なりなさい。
闘ってはいけない、一緒になりなさい。
全体に 明け渡しなさい。
生は 常に、あなたを あなたの現実へ引き戻す。
だからこそ、生は 衝撃的なのだ。

生は あなたに衝撃を与える。
夢を叶えないからだ。
だが、 生が あなたの夢を 叶えないのは良いことだ。
ある意味で、生はいつも 事を処理している。
生は、期待するのは良くない と、夢は不毛である と、欲望は けっして満たされないと理解できるよう、あなたを欲求不満にし、千と 一つのチャンスを 与える。
すると、あなたは欲望を 落とす。夢を 落とす、提案を やめる。
不意に あなたは 家に帰る、宝物は そこにある。




ラビのエイシクはお辞儀をして家に向かった
そして、自分の家の、ストーブの下から宝物を掘りだし
エイシクのシュルという名の、祈りの家を建てた



宝物は ずっと エイシクのストーブの下にあり、掘り出されるのを待っていた。
その同じ部屋でエイシクは、宝物は プラハの王宮の近くにあるという夢を見た。
だが、 宝物は まさしく自分のところに あった !
自分の部屋に、自分の家に。
そこで 掘られるのを待っていた。

この話は、きわめて示唆に富んでいる。
宝物は あなたの実存の中にある。
他の場所を 探しては ならない。
王宮も 王宮への橋も、すべて無意味だ。
あなたの実存の内部に 橋をかけなければならない。
王宮は そこにある、宝物は そこにある。

神は 誰一人として、宝物なしに この世に送ることはしない。
神は、あらゆる状況に備えて あなたを送り出す。
それより他に あり得るだろうか。
父親が 息子を長旅に出すときは、準備を万端に整えてやる。
予期せぬ状況にさえも。
父親は あらゆる準備を整えてやる。

あなたは、必要なものを すべて携えている。

探求者の中に 入っていくだけでいい。

外を 探しては ならない。
探求者を 探求しなさい、探求者を 探求すべきものとしなさい。



(10)終わり・・・(11)へ 続く