何ひとつ完全でもないし，何ひとつ不完全でもない
こういう価値づけ というのは無意味だ
仏陀いわく
ここでは，おおシャーリプトラよ
私の存在するところでは
何ひとつ良くもなければ，何ひとつ悪くもない
私の存在するここでは
サンサーラ(輪廻)と ニルバーナ(涅槃)は同じものなのだ
この世とあの世の間には何の区別もない
俗と聖の間には何の区別もない
私が存在するここでは，一切の区別が消え失せている
なぜならば
区別というものは 思考によってつくられるものだからだ
思考が消え失せるとき，区別も消え失せる
罪人というのは 思考によってつくられる
そして聖人というのも 思考によってつくられる
良いも悪いも 思考によってつくられる
いろいろな 区別をつくるのはすべて 思考のしわざなのだ
仏陀は言う
知識が消え失せるとき，思考が消え失せる
そこには 何の二元対立もない
それはすべて〈ひとつ〉なのだ，と
僧璨(そうさん) に有名な言葉がある
“ より高次の如性の領域においては，自己も自己と別なものもありはしない。 本来の身上が明らかになったとき，われわれは〈不二〉としか言えない。 すべての中の一，一の中のすべて ーー。 もし，これが認識されたなら，もう自分が完全でないことについての懸念などというものはない｡”
“ すべての中の一，一の中のすべて ーー。 もし，これが認識されたなら，もう自分が完全でないことについての懸念などというものはない｡ ”
完全などというものはないし
不完全というものも何もない
それを見てごらん !
それも たったいま見てごらん !
あとになって やって来て
私に どうやってそれをやるか などと聞かないこと !
そこには “ how (どうやって) ” なんかない
“ how ” が 知識を持ち込む
そして 知識というのは禍いなのだ
思考という歪曲作用をもった媒体がなければ
あなたは〈全体 whole〉との 統一 (ユニティー) へと落着する
あなたと〈リアリティー〉との間に作用している 思考がなければ
一切の区別は 消え失せる
あなたは橋渡しされる
そして，それこそ人間が絶えず 恋焦がれているものなのだ
あなたは根こぎにされたような
〈全体〉から根こぎにされたような感覚を持っている
それが あなたの悲劇なのだ
そしてあなたが根こぎにされているのは
ほかでもない，この思考という 歪んだ媒体のためなのだ
思考という この歪んだ媒体を落としなさい
こういう媒体を落として
心(マインド) に 何の観念も持たず
それがどうあるべきか という観念も持たず
ありのままのリアリティーを 直視してごらん
無垢な目でもって 見るのだ
そうすれば，一切の懸念は 消え失せる
その懸念の消滅の中で
あなたは ひとりのブッダとなる
あなたはブッダ な の だ !
しかし，あなたは
自分のまわりに 歪んだ媒体を持ち歩いているために それをのがしている
あなたは完璧な目を持っている
それなのに メガネをかけているのだ
そういうメガネが ものを歪め，色づけしている
そういうものが 物事をありのままでなくしてしまっている
その メガネを 捨てなさい
それが，われわれが「心(マインド) を捨てろ」というときの意味なのだ
心(マインド) を 否定してごらん
そこに 静寂がある
そして，その静寂の 中にあって
あなたは神聖なのだ
あなたは 一度として ほかの何ものであったこともない
あなたは ずっと そ れ で あったのだ
ただその認識が帰って来る
その了解が帰って来る
あなたは突然
自分は ヘビに足を 植え付けようとしていたのだ というポイントを見抜く
最初から そんな必要は まったくなかった
ヘビは 完全に完全なのだ !
足なしで 彼は見事に動いてゆく
ただ，慈しみの心から あなたは足を植え付けようとしていた
もしそれに成功したりしたら
あなたは そのヘビを殺してしまうだろう
あなたがけっして 成功できないのは幸いだ
あなたは物識りになろうと がんばっている
そして，それがために あなたは
あなたの知覚を，あなたの知力を
あなたの ものを見る能力を失っているのだ
それが私の言う “ ヘビに足を植える ” ことなのだ
知 る こ と は あなたの本性だ
知るために 知識を持つ必要など何もない
実際には，知識というものこそ 邪魔者だ
知識は 禍いなのだ
知識を否定して， 在 り なさい
すると，あなたは ひとりのブッダだ
そして
あなたは いままでもずっと ひとりのブッダであったのだ
第３話・・・終わり
THE HEART SUTRA
by BHAGWAN SHREE RAJNEESH
Original Copyright 1978
般若心経
1980年 1月 10日 初版
