saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第2話ーーーQ&A 三番目の質問 (02)

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ウパニシャッドの中にひとつの物語がある

スヴェタケトゥ(Svetaketu) が
彼の師のところから両親の家に帰って来た
彼は すべてを学んでいた
彼の父,偉大な哲学者のウッダーラカ(Uddalaka) は
彼を見ると こう言った
「 スヴェタケトゥ
表に出て あそこに見える木の果実を取って来ておくれ 」

彼が出て行って果実を取って来ると
父親は言う
「それを開けてごらん
その中に 何が見える ? 」
その中には たくさんの種がはいっていた
さらに彼は言う
「種のひとつを開けてごらん
その中に 何が見える ? 」


そこで スヴェタケトゥは言った
「何もありません」

すると父親は言う
「あらゆるものが この無から出現するのだ
この大樹
千台の荷車が その下で休めるぐらいに大きなこの樹も
ただひと粒の種から出現したのだ
それが,その種を割ってみても そこには何も見つからない
これが 生の神秘だ
あらゆるものが 無から出現する
そして,ある日 その樹も消え失せ
どこに行ったかわからなくなってしまう
それは どこにも見つからない
人間も またしかり
われわれは 無から出現し
われわれは 無であり
われわれは 無の中に消え去ってゆく」,と


これが 空観だ
そして
仏陀の アヴャークリトーパデーシャ(avyakritopadesha) とは 何か ?
語られざる,定義され得ざる教えとは ? ーー
それは 同じものだ
彼はけっして ナーガルジュナが明確にしたほど
それを哲学的に明確にはしなかった
彼が 一度もそれについてしゃべらなかったのはそのためだ
彼が それは定義され得ないと言うのはそのためだ
それは 言語のレベルには持って来られないものなのだ
彼は それについては沈黙を守った
あなた方も 拈華微笑(ねんげみしょう)の話は知っているだろう


ある日,仏陀は 手に一輪のハスの花を持って来ると
何も言わずに 静かに坐った
そして,そこには 一万人の弟子たち,一万人の比丘たちがいて
彼が何か しゃべるのを待っていた
ところが彼は,そのハスの花を 見つめ続けている
そこには 大いなる静寂があった
そしてまた,その場には 大きなざわめきも起きてきた
人々は動揺しはじめた
彼は 何をしているのだろう ? ーー

それまで彼が そんなことをしたためしはなかった

そうすると,弟子のひとり マハーカーシャパ (摩訶迦葉 マカカショウ) が微笑んだ
仏陀は マハーカーシャパ を 呼び寄せ
彼に そのハスの花を与えると,聴衆に向かって
「 語られ得ることは 私はあなた方に語った
そして,語られ得ざること
それを私は マハーカーシャパ に 与えた 」,と言った
これが アヴャークリトーパデーシャ (avyakritopadesha) だ
これが 限りなきメッセージだ
これが 禅仏教の起こり,その伝法なのだ
何かが 仏陀によってマハーカーシャパに伝えられた
何か目に見える地平では 無であるもの
何もない
何の言葉もなく,何の経典もなく,何の理論もない
しかし,何かが伝えられた
何だろう ? ーー


禅僧たちは,2500年の間
「 それは何か ? 」ということを瞑想し続けてきた
何が 伝えられたのか ?
厳密には 何が与えられたのか ? ーー


(03)へ続く