禅僧たちは，2500年の間
「 それは何か ? 」ということを瞑想し続けてきた
何が 伝えられたのか ?
厳密には 何が与えられたのか ? ーー
実際には
仏陀から マハーカーシャパに与えられたものなど何もありはしない
マハーカーシャパは 突然 何かを 理 解 したのだ
彼は その静寂を理解した
彼は その透徹した静寂を理解した
彼はその 冴 え の 瞬間を
その全き無思考の瞬間を理解したのだ
彼は その瞬間において 仏陀とひとつになった
それが 明け渡しの何たるかだ
彼が それを や っ て いたというのじゃない
仏陀は静かで，彼も静かだった
そして，その二つの静寂が互いの中に溶け合った
そして，二つの静寂というのは
別々に分かれたままではいられないものなのだ
覚えておきなさい
なぜならば，静寂には 何の境界もないからだ
静寂というのは境目のないもの
静寂とは ただただ開かれた
あらゆる方向に開かれたものなのだ
その一万人の僧侶たちの大海に
その日は 二つの静寂が あった
仏陀と マハーカーシャパ ーー
ほかは全員 外側にとどまった
マハーカーシャパと 仏陀が出会った
マハーカーシャパが 微笑んだのは そのためだ
それは仏陀が それまで説いた中で 最大の説法だったから ーー
ひと言も言わずして 仏陀は すべてを言った
言われ得ることの一切と
そして 言われ得ざることの一切，それまでもだ
マハーカーシャパは 理解して，笑った
その笑いの中で
マハーカーシャパは 完全に消え失せて ひとりのブッダとなった
仏陀という灯の炎が マハーカーシャパに飛び移ったのだ
それが 経典を越えた伝法 ーー
拈華微笑(ねんげみしょう) と呼ばれるものなのだ
それは 人間意識の歴史の中でもユニークなものだ
それが アヴヤークリトーパデーシャ ーー
語られざる言葉，発せられざる言葉と呼ばれる
(04)へ続く
