saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第18章「意識の光」質疑応答 (17)


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(17)

慧能は 明け渡しの道を 選んだ。

そして 三年が 過ぎた )

 

彼は 師の横に 座っていた。

時々 師は 彼を見、見続け、ずっと 見続けていることがあった。

その 見ることは 余りにも浸透し、余りにも 深く、その視線は 彼に つきまとった。

彼が 師と 一緒でなかった時でさえ その視線が 彼に つきまとってきた。

彼は 夜寝ていた。が、師の目は 彼とともにあった。

師は 彼を 見ていた。

彼は夢を見ることさえ できなかった。

というのも、師が そこにいたからだ。

 

三年間、絶えず彼は 師の脇に座り続けた。

 

そして突然、師が 彼を 見た。

その視線は 彼を 突き通した。

彼の目は 奥深く入っていった。

そして その目は 彼の実存の 一部になった。

 

彼は 怒ることが できなくなった。

彼は 性的であることができなくなった。

というのも、師の 目がそこにあったからだ。

師の 目が 彼につきまとっていたのだ。

導師(グル)は そこにいた。

彼は いつも師の臨在のなかにあった。

 

それから 三年、 グルは 初めて 笑った。

慧能を見て 笑ったのだ。

その時から、笑いが 新しく つきまとうことが始まった。

それ以後、彼は その 笑いを聞くようになった。

眠っていても、突然 その笑いを聞き、震えはじめた。

そして再び グルは 彼を見て 笑った。

それが すべてだった。

 

それが三年間。 全部で 六年間、そういうことが 続いた。

 

そして 六年後の ある日、グルは 慧能の手を取り −−− 彼の目の中を のぞき込んだ。

そのとき、慧能は 自分の内に流れる グルのエネルギーを感じた。

彼は そのとき、ただの器、乗り物になっていた。

彼は 師の 暖かさ、エネルギー、電気、全てが彼の内に 流れるのを感じていた。

師が そこにいたので、眠ることは 不可能だった。

そして あらゆる時間、あらゆる瞬間、何かが 師から流れ出していた。

 

それから 三年 −−− 師に 弟子入りしてから 全部で 九年間の後 −−− グルは慧能を 抱きしめた。

慧能は その時のことを こう書いている。

「その日から、師の目が つきまとうことは なくなった。

そこには、 もう慧能という人間は いなかった。

ただ、 師だけが そこにいた。

だから、つきまとうことが なくなったのだ」

 

それから また 三年が過ぎた −−− 合計十二年 −−− 

ある日、師が 慧能の足に触れた。

その日、師も また消え去ってしまった。

だが、慧能は 光明を得た人と なった。

 

多くの人が、後になって 彼にそのことを こう聞いてきた、

「どうやって光明を得られたのですか ? 」と。

彼は こう言った。

「わしには 何も言えん。

わしは ただ明け渡しただけだ。

その後のことは、全て師によって なされた。

だから、わしには 何が起こったのか わからん ! 」。

 

 

(17)終わり(18)ヘ 続く