(05)
(だが、あなたが演壇に立ち、聴衆に向かって 何かを喋っていると、同じことが起こる。)
そこに トラは いない。が、大勢の聴衆が集まっている場にいると、あなたは恐くなる。
恐怖が形を取り、身体が その知らせを受け取る。
あなたが 恐怖を感じているという 情報の伝達は、自動的だ。
すると身体は、あなたが トラに襲われた時に解き放つであろう化学物質と 同じ化学物質を 解き放ち始める。
そこに トラはいない。
あなたを襲っているものは、実際には 誰もいない。
が、あなたは聴衆の存在から、猛撃を与えられているような感覚をもつ。
実際には、誰の中にも攻撃性が存在する。
だから 恐ろしく感じるのだ。
そういう状況では、身体は 戦う用意をするか、あるいは 逃げ出す用意をする。
だが 両方の選択が 閉ざされてしまった。
あなたは その場にいて、話さなければならない。
すると あなたの身体は、寒い夜でも 汗をかきはじめる。
何故か ?
それは 身体が 逃げ出すか、戦うかの準備をするからだ。
血液循環が 平常より もっと早くなり、熱が作り出される。
一方、あなたは そこに立った状態でいる。
だから、あなたは 汗をかきはじめる。
その時、かすかな震えが 身体を乗っ取る。
あなたの 身体全体が震え始める。
それは ちょうど、車を走らせ、
アクセルとブレーキを 同時に踏むのと 同じことだ。
そんなことをすれば エンジンが熱くなり、空転している上に、ブレーキをかけている状態になる。
そうなると、車のボディ全体が 震え出すだろう。
あなたが演壇に立つと、同じことが起こる。
あなたは 恐くなり、身体が 走り出す準備をする。
アクセルを 踏むが、あなたは走れない。
聴衆を前に 話さなければならない。
あなたは 何かの指導者か、みんなに話さなければならない立場にいる。
そういう状況だから、逃げられない。
その状況と 対決せざるを得ない。
演壇に立ち、発言しなければならない。
さあ、あなたは 全く矛盾する 二つのことを同時にする。
アクセルを踏みながら、ブレーキも踏んでいる。
あなたは 走り出せない。
が、身体は 走り出す用意をしている。
すると身体は 震え出し、熱を生じる。
そういう状況で、身体は「何をしているんだ ?」と 訝っている。
身体には、あなたが理解できない。
すると、ギャップが生じる。
無意識が 一つのことをやり、意識は 何か別のことを し続けている。
すると あなたは 分裂する。
その ギャップを 深く理解することだ。
あらゆる行為の中に、そのギャップが 存在する。
あなたが 映画を、エロティックな映画を見ているとする。
すると、あなたのセックスが 呼び起こされる。
身体は 性的体験に向かって 爆発する用意があるのに、あなたは ただ、映画を見ているだけだ。
ただ、椅子に座っている。
その一方で、あなたの身体は 性行為のための準備が整っている。
その映画を見ることで、性的なエネルギーは どんどん加速し、あなたを 押しやり続ける。
あなたは 興奮しているのに、何もできない。
身体には 何かをする用意があるのに、状況が許さない。
すると ギャップが 生じる。
自分を 自分でないように感じる。
あなたと あなたの身体の間に バリヤーがある。
あなたは 病気に なる。
この障害のため、同時進行する この絶え間なき興奮と抑圧のため、同時に行なう加速と制御のために、あなたの存在の中の 絶えざる対立のために。
もしあなたが 今の意識状態から下落し、動物になれば・・・それは あり得ないが・・・あなたは統一体となり、健全になるだろう。
それは 不思議な事実だ。
動物は、自然な状態では 病気にならない。
が、動物園に入れると、人間の病気を 真似し始める。
どんな動物も、自然な環境や 自然な状態において、ホモセクシャルは いない。
しかし その動物たちを動物園に入れると、不可解な振舞いを始める。
ホモセクシャルのように 振舞い始める。
自然な状態なら、狂気に走る動物は いない。
が、動物園では 狂い始める。
歴史上、動物の自殺が 報告されたことは全くない。
が、動物園では、動物たちの自殺が あり得る。
それは 不可思議にみえるが、実は 不可思議ではない。
人間が 動物たちを不自然な状況に追いやり始めると、彼らの心の内側が 分裂するのだ。
分裂が作り出され、ギャップが作り出され、統一性が 失われる。
人間は 分裂状態にある。
人間は 分裂状態で生まれてくる。
では、どうすればいいのか ?
(05)終わり(06)へ 続く
