saleemのブログ

「 先ず一歩 内なる旅に 友は無し 」Zen柳

第7話 ーーー 〈無〉に 帰依する (23)


クレシャ・アヴァラナ (klesha avarana 煩悩障)

欲,憎しみ,嫉妬のようなもの ーーー
それらは “ クレシャ (klesha 不浄なるもの) ”と 呼ばれる
それらが あなたを 覆う

あなたは それらを観察したことが あるだろうか ?

怒った人物は ほとんどつねに 怒ったままでいる
あるときは より少ないし
あるときは より多い
が,怒っているのは 変わらない

彼は どんなものにでも 飛びかかってゆく用意がある
彼は どんな口実でも 見つけたら激怒する態勢にある
彼は 内側で 煮えくりかえっているのだ !

そして 嫉妬深い人物も またしかり
嫉妬深い人は
何か 彼,または彼女が 嫉妬できるものを見つけようと 探し求め続けている
嫉妬深い奥さんは 旦那さんのポケットを 探り続ける
何か 見つからないか
彼の 手紙の中に
彼の ファイルの中に
何か 見つけられないか ーーー


ムラ・ナスルディンが 家に帰って来ると
決まって 何かかにか 争いがある

彼の奥さんは なんとも偉大な探索屋だ
彼女はいつも 何かかにか 見つけ出す
彼の日記に 何か電話番号が 書いてある
すると彼女は 疑いを起こす
彼のコートに ついている髪の毛
すると彼女は 大調査に乗り出す
この髪は どこから来たのか ーーー

ある日,彼女は 何も見つけることが できなかった
髪の毛 一本もだ
ムラは その日 あらゆる手を尽くしたのだ
彼女はそれでも 泣きの涙にくれはじめた
そこで ムラは言った
「さあ,どうしたというんだ ?
髪の毛の 一本だって ぼくのコートに 見つけられなかったじゃないか・・・」

彼女いわく
「だから 私は 泣いているんですよ
ということは
今度はあなた 丸坊主の女の人と つき合いはじめたんでしょ ? 」

丸坊主の女の人を見つけるなんて 本当にものすごく大変だ
しかし,それが嫉妬深い人の 心(マインド)なのだ

こういうものを “被覆” と 言う

仏陀は それらを “クレシャ (klesha 不浄なるもの)” と 呼ぶ

自我(エゴ)というものは いつも何か自慢にするか
あるいは傷つくかする ものを探し求めている
所有欲のある人 というのは
つねに何か 自分の所有性を ひけらかせるものを探し求めている

かと思うと,何か その反対のものを見つけ出して
そのために 戦う


人々は 飽きもしない

そして,私は ほかの人たちのことを話しているんじゃないよ
私は あなたのことを 話しているのだ
ちょっと自分の 心(マインド)を 見守ってごらん
自分が 何を探し求め続けているか
自分の 心(マインド)を 見守ってごらん
24時間 ーーー

そうすれば,あなたは こういう被覆
アヴァラナの すべてに出くわすことだろう


未完結の行為
あるいは また 不浄なるもの
あるいは また 三番目は
ジュニャーナ・アヴァラナ (jnana avarana) と呼ばれる
信条,意見,主義 ーーー
知識の 被覆

それらは あなたに 知 る ことを許さない
それらは あなたに 見るに充分な空間(スペース)を与えてくれない
これら 三つの被覆が 落とされなければならない


これら三つの被覆が 落ちたとき
はじめて人は〈無〉の中に住する
その “住する” という言葉もまた 理解されるべきものだ
仏陀は 言う
「彼は〈無〉の中に住する
それが彼の わ が 家 なのだ」,と
〈無〉が 彼の わが家なのだ
彼は その中に住する
それは ひとつの住み家なのだ
彼は それを愛する
彼は完全に それと同調している
それは かけ離れたものじゃない
彼は その部外者(アウトサイダー) のようには感じない

そして,彼は 自分がホテルに泊まっていて
明日になったら そこを離れなければいけない というふうに感じはしない
それは 彼の 住み家なのだ
思考の被覆が 落とされたとき
〈無〉が わが家と なる
あなたは それとの全き調和の中にいる


キェルケゴールサルトルは 一度も そ こ まで 行ったことがない
彼らは ただ それについて思索したにすぎない
彼らは ただ それはどんなものだろうか,と
それについて 考えるだけだ
キェルケゴールが おののきを感じるのは そのためだ
彼は ただただ 考 え る
ちょっと 考えてみてごらん

自分が死んで,火葬の薪の上に乗せられ
永遠に お終いになってしまうのは どんなものだろう ーーー

そして そうなったら,美しい樹々や
こういう素敵な人たちを 見ることもできない !

二度と 笑うこともできなければ,二度と 愛することもできないだろう
星々を 見ることもできないだろう
そして 世界は継続し
あなたは まったくそこにはいないのだ
あなたは 震えを感じないだろうか ?

あなたは おののきを感じないだろうか ?

一切が 持続する
鳥たちは 歌うだろうし,太陽は 昇るだろう
そして,海は 逆巻き
どこかの鷲が 高く高く舞い上がり続けてゆく

そして,そこには花たちと その芳香があるだろう
そして濡れた大地の かぐわしい香り ーーー
そのすべては そこにあるだろう
それなのに
突然 ある日,あなたは いなくなってしまう

そしてあなたの体は 死んでしまう
あなたが それと一緒に 生き
大変な手をかけてきた ビューティフルな体
それが病気になれば あなたは苦しんだ
それが,ある日 もう使いものにならなくなって
それを 愛した人たち
その同じ人たちが それを火葬の薪に載せて 火をつけるのだ
ちょっと それを 思い描いてごらん
思索を めぐらしてごらん
すると おののきが やって来る


キェルケゴールは それについて思索したに違いない



(23)終わり・・・(24)へ 続く