〈無〉から行為するとき
あなたは 感応する
それはもう 反応じゃない
それには真実が ある
その中には 効力がある
真正さが ある
それは 実存的なものだ
それは じかで
自然で
シンプルで
無垢だ
そして，こうした行為は どんなカルマ(karma 業)も つくらない
覚えておきなさい
“ カルマ ” という言葉は 行為を意味する
ある特定の行為だ
行為というものが全部 カルマを 生み出すわけじゃない
心にとめておくといい
仏陀は 彼の 悟りの後 42年間 生きた
その間 ずっと菩提樹の下に坐って 何もしていなかった というわけじゃない
彼は 千と一つのことをした
だが，カルマは つくられなかった
彼は行為した
だが，それはもう 反 応 じゃなかった
感 応 だったのだ
もしあなたが〈無〉から感応するとしたら
それは 何の残滓(ざんし)も 残さない
それは あなたに 何の痕跡も 残さない
カルマは つくられない
あなたは 自由なままだ
あなたは 行為し続け
そして，自由なままでいる
それは ちょうど空を飛ぶ 鳥のようなものだ
何の痕跡も，何の足跡も 残さない
〈無〉の空(そら)に 生きる人間は
何の足跡も，何のカルマも，何の残滓も 残さない
彼の行為は トータルだ
そして，その行為が トータルなとき
それは 終わっている
それは 完結している
そして，完結した行為というのは
あなたのまわりに 雲のように まとわりついたりは しない
まとわりつくのは 完結していない行為だけだ
誰かが 侮辱したーーー
あなたは その相手を殴りたかったのだが そうしなかった
あなたは 自分の聖人の面子(めんつ)を守った
あなたは 微笑んで
その人に 祝福を与えて 家に帰った
さあ，それは 大変なことになる
いまや 一晩中
あなたは 自分が その男を殴っている夢を見ることだろう
あなたは夢の中で 彼を殺すことすらしかねない
何年もの間
それは あなたに まとわりつくことだろう
それは 未完結なのだ
どんなものであれ 未完結なものは 危ない
ところが，あなたがインチキだと 何から何まで未完結になる
あなたは ひとりの女性を愛する
が，それを完結させるには充分じゃない
愛を交わしてる間でさえ，完全に そこにはいない
もしかしたら依然として下稽古を やっているのかもしれない
もしかしたら あなたは いろいろと出まわっている 性の教則本を読んできたのかもしれない
もしかしたら あなたは ヴァッツヤヤナの書いたカーマスートラを読んできたのかもしれない
あるいは，マスターズ・ジョンソンか キンゼイ報告かもしれない
とにかく あなたはどうやって愛を交わすかを 勉強してきた
そして，あなたは用意万端 整っている
物識りだ
いまや この女の人は
あなたのその知識を実行に移す ひとつの機会にすぎない
そうやって，あなたは自分の知識を実行に移す
だが，それは未完結になることをまぬがれない
あなたが その中に いないからだ
そして，そうしたとき それは不満足なものだ
そうして あなたは欲求不満を感じる
そして，その原因は あなたの 知識 なのだ
愛というのは 何か “実行に移される” ようなものじゃない
生は 実行に移されることなど必要としない
生は 生きられるべきものなのだ
(10)終わり・・・(11)へ 続く
